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やゝあつて徳次が訊いた。
紛まがふことなく、それは神原喜作だつた。
「なに、消防演習?」
徳次は身体中からこみ上げて来る悦よろこばしさのためにさうなつたかの如く、思ひ切り伸び上るやうにして答へた。だが、それも向ふにはよく聞きとれなかつたらしい。房一は川向ふで手をふつた。下手の方を指さした。徳次には判らなかつた。房一は又自転車にのつた。
「それからね」
「うむ」
と気のない返事をした。
ゆつくりと時間をかけて、楽しみ楽しみ喰べた。それは喰物のおいしさよりも、かうやつて小娘のやうな真似をするのがおいしかつたのだつた。
私は東京にいたころから、一日に三度四度ずつ入浴する習慣だった。しかし、うすい木でつくられた普通の沸し風呂では、冷めるのが早く、たけば熱く、こんな忘我の状態を経験することはできなかった。
熱心になっていた「な」の字さんは多少失望したらしい顔をした。
「いや、そんなこたあ、――そんなこたあしませんよ」
「今、あんたの便をしらべてみたがね」